タイトル

生環研2004年度「池田市で行ったデジタコを用いた交通省エネ実験」
実験結果概要(財) 生活環境問題研究所

 

I.実験の背景

当研究所は、池田市から委託を受けて市民参画による環境計画の策定やそのフォロー体制づくりを行ってきました。その中から、具体的かつ実証可能な運輸交通部門のエネルギー削減のあり方を検討してきました。

年度

施策と事業

モデル事業にかかわる主な内容

1999.7

環境基本計画づくり開始

市民とともに3年をかけて作成。市内事業者との協力体制づくりを後押し。

2002.3

環境基本計画を策定

中学生に読んでもらえる環境基本計画物語も作成

地域省エネルギービジョンを策定

2010年までに市全体のエネルギー消費量の10%の削減

2004.3

運輸交通部門の地域省エネルギービジョンを策定

池田市の運輸・交通部門によるエネルギー消費量は市全体のエネルギー消費量の35%を占め、二酸化炭素排出量は171,698トンCO2(2001年)
池田市での運輸・交通部門のエネルギー消費量10%削減にむけて、デジタコなどのエコドライブ支援機器の普及も削減メニューにあげる

2004.9

NEDO補助事業(フィージビリティースタディ)への申請・落選

デジタコ導入実験をあおぞら財団とともに企画提案したが、惜しくも落選。

JCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)補助事業に申請・採択

池田市をフィールドとしたデジタコ導入の社会実験を企画提案し、採択される。
事業者・行政の多大な協力を得て、実験は成功。

2005.7

NEDO補助事業(モデル事業)
採択

河北地域をフィールドとしたデジタコ普及事業をあおぞら財団とともに企画提案し、採択。デジタコ導入補助事業と本研究会による事業評価の2本柱。

 

II.主な実験内容

1.研究会の開催

池田市との共催による大学、行政、事業者、環境保全活動団体等によるエコドライブ推進研究会を開催、実施状況を報告した上、指導・助言をいただきながら、事業を推進した。

2.デジタルタコグラフ活用実験

約10台の事業所の車両に音声ナビ付きデジタコを搭載し、運行実験を行った。
音声なし期間と音声ナビゲーション期間の比較から燃料削減量を算出。

3.事業所ヒアリング

実験終了後、参加企業やドライバーに感想、参加前後の意識変化、課題は何かなどについてヒアリングを行い、ドライバー、事業者の意識向上、導入に向けての課題を把握した。

 

III.音声ナビ付きデジタコによる運転の変化

■速度の低下と安定(点線より右が音声ナビ期間)

速度の低下と安定

 

■燃費の向上

燃費の向上

 

■エコドライブ効果(丁寧な運転が行われるようになった)

項目

音声なし

音声あり

削減率

走行時間あたりの速度オーバー時間(秒/秒)

0.24

0.14

43%

走行時間あたりのエンジン回転オーバー時間(秒/秒)

0.0243

0.0041

83%

走行時間あたりのアイドリングストップ時間(秒/秒)

0.241

0.229

5%

走行距離あたりの急発進回数(回/km)

0.026

0.014

46%

走行距離あたりの急減速回数(回/km)

0.0035

0.0019

46%

燃費向上率(km/リットル)

5.74

6.1

6.20%

 

■年間削減効果推計(2トン車6台、4トン車4台、計10台で)

軽油32,540(リットル)、二酸化炭素85.35(t-CO2)の削減

■エコドライブ推進研究会における評価

  • 今回の実験が、地球環境問題に地域が貢献することにつながり、その延長上に都市のあり方や生活のあり方が見えてくる。
  • 実験によって効果を提示でき、インセンティブが見えてくる。身近な貨物交通を対象にしているので、波及効果が期待できる。
  • エコドライブは抽象的な精神論に終わっていたが、機器を積むことにより実証的普遍化が可能。

 

IV.事業の主な成果

  1. 様々な立場から議論できる協議の場づくり
  2. 地域的な取り組みへの広がり
  3. 環境基本計画推進事業としての位置づけ
  4. エコドライブを行うことによる定量データの明示

 

V.実験で明らかになった主な課題

  1. エコドライブを認める社会環境づくりが必要
  2. 費用対効果と導入に合わせた各種制度の規制緩和が必要
  3. エコドライブ可能な運行時間設定と荷主の理解が必要
  4. ドライバーの負担に報いるしくみづくりが必要

エコドライブの実行は法定速度遵守という当然のことを実施するだけでもドライバーや事業所に大きな負担を与えている。エコドライブの社会的認知を急がなければならない。さらに、運輸事業者はエコドライブなどの環境側面でのマネジメントには手が回らないと状況にある。

地域にエコドライブを推進する機運を高め、積極的に取り組む事業者を支援するソフト的なシステム、地域がエコドライブを実践する事業所やドライバーを支えることのできる仕組みづくりを整えていく必要がある。

 

事業の成果(JCCCAのWebサイト) http://www,jccca.org/more/local/model04/p11.html