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見えてきた課題
(松村暢彦/大阪大学大学院工学研究科 助教授)

松村暢彦「人」に注目

自動車環境対策として現在すすめられている政策としては、交通流対策やモーダルシフトなどの交通政策、ディーゼル車の排ガス削減や低公害車の開発といった車両対策、排ガス規制の強化や低公害車の普及といった社会経済システムの整備などがあります。しかし、忘れているものがあります。それは「人」です。色々な政策があったとしても運転をしているのは人であり、そこに注目したのが「エコドライブ」の意義なのではないでしょうか。

 

エコドライブの可能性

「エコドライブ」の可能性としては次のようなことがあげられます。まず、これまでのエコドライブをやりましょうという思想的なものではなく、車載機による適切な指示によって技術的に行うことができるようになったということがあります。次に、燃費の向上という視点からは燃料費の削減とともに環境の改善につながるということがあります。さらに、安全性の向上という視点からは交通事故の回避につながるということです。そして何より、従来の環境対策と大きく違う点は、上からやれと言われて実施するものでなく、ドライバーと事業者が生み出した効果であるということです。

今回の実験の意義については、まず、燃費、安全性の向上を実証的に検証したということが挙げられます。次に、従来の実験というものは、実施した行政やコンサルタントが報告書にまとめるという形で報告されてきましたが、実験者による生の報告がされているということがあります。最後に、地域のNPOが主体となって実施した実験であるということです。これまで行政がやってきた実験では続けて同じことができませんでした。地域のNPOが実施することによって継続性というものが生まれます。

 

活かすシステムが必要

最後に、実験によって見えてきた課題についてですが、エコドライブを活かす社会システムが必要なのではないかということです。まず、ドライバーと事業者の関係では、ドライバーへの還元方法や運転教育のあり方について検討すべきでしょう。次に、事業者と社会という観点にたつと、エコドライブを実施するとそれだけ運行時間がかかる訳ですが、そういうことを盛り込んだ形での発注形態をつくる必要がでてきます。また、車載機装着への助成金なども必要になってくると思います。さらに、ドライバーと社会の関係については、エコドライブという運転形態が周りに受け入れられるものでないといけません。

最後に、1社だけがやっても難しいという現状を踏まえると、エコドライブの地域への広がりということが求められます。一定の地域の中でまとまった形で取り組むことができれば、そこから社会の認識も変わるのはないかと思います。